札幌の南に真駒内公園があります。
公園の中心部を流れるのが真駒内川です。
1972年 札幌オリンピックに合わせて公園も河川も整備されました。
札幌はこのころ急激に発展しましたが、それまでは都市機能は整備されていませんでした。
上下水道はようやく市街地を網羅したばかりの時代です。
環境破壊を伴う都市開発も盛んでした。
その様な状況でしたので市内の川は結構汚れていました。
そんな状況はサケ(鮭)が遡上しなくなったことを嘆き、遡上回帰を目指しカムバックサーモン運動が行われたことからも顧みることができます。
当時の河川整備で護岸はコンクリートブロック積みで、所々に落差1m程のコンクート堰堤がありました。
現在の様に植物が繁茂していませんでしたので人々が足を踏み入れやすかったのでしょうか、
多くの人々が釣竿を垂らしていました。
大したものは釣れません。ウグイがたくさん居たのと、ドジョウ、カワカジカです。
ヤマメを釣りたくて皆が足を運ぶわけですが、そんな魚は釣れません。
この時代のヤマメは放流物です。
ネイティブなヤマメなどいるのだろうか? 否居ない。と誰もが断定する状況です。
私の父のが子供だった時代(1937年生)は、この川の主流となる豊平川にイトウが生息していたと言っていました。
子供の見る目だったのでよほど大きく見えたのかもしれませんが、1.5m程の魚が泳いでいるのを見たと話していました。
そんな感じで昔は自然豊かだったという私たちの心理状況だったのです。
ある日、時々くるこの川に兄らと釣りに来ました。
休日で堰堤の周りを囲む老若男女が竿を垂れたり、日向ぼっこをしたり。
園地なのでトイレなどが整っているのも人々が気楽に釣りができる場所だったのでしょう。
この川いつもと違ったのは、堰堤の淀みに悠々と泳ぐ大きな魚が居たことです。
堰堤の遡上を狙う魚です。
大人たちはサケだと騒いでいました。
釣竿を持った人々は大魚が周回してくるのを待ち、鼻先に針を垂らすのでした。
そんなサカナは掛かるわけないのに。掛かっても小物釣りの糸と竿でどうなる物でもないのに。
夢を追う様に私も大魚が来ると鼻先に針を落としました。
釣り人を楽しませてくれた大魚です。
時間が過ぎ、網タモを持った大人のグループが現れ、大魚を捕獲しました。
(※北海道では海から遡上したサクラマスを捕獲することは犯罪です。網で魚を獲ることもことも違法です。)
上げられた魚を除き込むと、60cmくらいあり鮭にしか見えません。
こんな魚は鮭しか見たことがなかったので。
この時の感動は忘れられません。
「この陳腐な川に、こんなに大きくて立派な魚が、今も棲んでいるなんて!」
時代が変わり、自然回帰の考え方への変化もあり、川からは堰堤も取り除かれました。
サーモン運動で川の水もきれいになった様です。
植物も繁茂し鬱蒼となりました。
近年、河川を辿って鹿が市街地に入ってきます。
鹿ばかりではなく、ヒグマの目撃情報も出る様になりました。
反対に人々が河川で遊ぶ姿は見られません。
人々の楽しげな日常は別のフィールドへ。
社会はどこへ向くのが理想なのでしょうか。